信じてしまう人が後を絶たない。ひねるとカニの身が出てくる蛇口など、実際には存在しないものを取り上げた地方自治体のPR動画に対し、賛否の声があがっている。

 ニュース番組風に作られた動画は、鳥取県が制作し動画投稿サイトで公開されている鳥取県をPRするためのものだ。

 動画では、鳥取県の米子鬼太郎空港で今シーズンから始まったというサービスを紹介。蛇口から松葉ガニが出てくる仕組みでしかも無料だと伝えている。実際にはこのような“カニ蛇口”は存在しないのだが、動画を見た街の人は「本当にあると思った」「びっくりした。信じちゃいましたよ」と驚きを隠せない。

 動画を掲載するホームページの説明には、「この動画はフィクションです」との注意書きがあるものの信じてしまう人も少なくない。

 さらに鳥取県では、他にも驚きのニュース動画がある。このニュース動画によると、鳥取県の伝統スポーツとしてカニのように横移動しながら相手の手をはさむという武術「カニ拳」なるものを紹介。高校生が真剣に練習する姿を伝えている。

 カニの水揚げ量日本一の鳥取県が、地元をPRするためにカニをテーマに作ったPR動画。見た人の感想は様々だ。

「良いと思います。PR効果があると思います」「食いつきますね。バッチリ私は」という動画を楽しんで見る賛成派がいる一方、「もうちょっと他の方法が良いかな。カニ好きな私としては」「誤解を招きそう。PRにならなそう」と首をかしげる人もいる。

 鳥取県庁観光戦略課の倉本義隆係長は「やはり印象に残っていく、インパクトあるものを作りたいというところがあったので、どうしてもそういう点では理解頂けないこともあるのかなと思うのですけれど」とコメント。

 先月19日から公開された5つの動画は関連サイトなどで視聴回数が100万回を超える人気となっている。そうなると気になるのがその効果。都内にあるアンテナショップで動画公開後の売れ行きを聞いてみた。

 「とっとり・おかやま新橋館」の瀬尾泰弘店長は「年末年始の忙しい時期と重なるので、その辺りは(売れ行き)は検証しにくいですけれど、反響は良いというのは肌感覚では思っています」とコメント。

 インターネット上では「かなりクオリティ高い」「どうした鳥取県」「混乱するwww」「やり過ぎ(笑)」という声があがっている。こういった声に対し、鳥取県は「100万回以上の再生回数で大変大きな反響を頂いたと思っています。インターネット上で賛否両論言われていることも知っていますが、それも含めて受け止めます」とコメント。

 このようなPRだが、演出方法によっては成功することもあれば、非難されて動画を削除することになる場合もある。岐阜県関市が制作した地元の刃物のPR動画「もしものハナシ」は成功例。もしも刃物がなくなったらという内容が好評だった。月に40件ほどだったふるさと納税が、動画公開後の20日間で300件の申し込みがあったという。

 一方、うまくいかなかった例もある。鹿児島県志布志市が制作した「UNAKO」。名産のうなぎを擬人化し、うなぎ少女「UNAKO」を男性が愛情を込めて飼育しているという動画を公開した。その結果、女性蔑視、グロテスクなどと批判され、公開からわずか5日で公式サイトから削除されてしまった。

 このように地方のPR動画が“過剰”になってしまう背景について、自治体広報に携わってきたPR会社・オズマピーアールの名和佳夫氏に聞く。名和氏は「ピコ太郎さんなど、情報発信の一つとして世の中全体がWEB動画に注目している。各自治体も時代に合わせて予算をPR動画にあてるようになった。知名度を上げたい自治体は、再生回数を上げられるような仕掛けを作る必要があるためユーモアのある動画を作るようになったのではないか」と話す。